かつてのファン企画によるメモリアル盤。粒ぞろいの全23曲は、遺された数枚のEPをはじめ、未発表セッション、ライヴ音源、デモ・テープなどをコンパイルしたもの。丁寧な編集が印象に残る。ノン・ミュージシャンによる「衝撃」や、ロフト・ジャズの興隆の陰で、かくも優れたバンドが埋もれてしまったのは時代のアヤと言うほかない。なんせ、かのdB'sですらアルバム・デビューは英国から。ちょいヒネった歌もの主体の、熱くプログレッシヴな音は、当時のNYのシーンでは「お呼びでなかった」らしい。サックス入りの曲など、20年以上早いSWEEP THE LEG JOHNNYみたいだ。
Math Rock+うたごころ 新譜・Noreaster Failed Industries (2004)
フィラデルフィア発5人組のデビュー盤。26分ほどのミニ・アルバムで、組曲と呼ぶにはあまりにミニマルな断章を10編収録。SEA AND CAKEやJohn Vandersliceを意識しているという発言のとおり、基本は繊細な歌ものである。奇数拍子を多用した楽曲に、ギター2本が織りなすMath Rock的テクスチャー感もあるが、ローズ・ピアノやメロトロンのゆらめく色彩に彩られた淡い叙情美と、浮遊感と。さらに随所にダイナミックなアクセントを加えて、もう少し構成力を磨けば無敵だろう。近日リリース予定のフルレンスに期待である。カンタベリー好きにもアピールしそうな一枚。
年間200本という地道なツアー活動によって、いわゆるJamband筋で評価を上げてきたインスト・トリオ。ジャズ・ファンクからユーモラス、デンキ系トリップ・ジャムまで揺れ幅大きい演奏。ベース不在のぶん直線的なドライヴ感こそ希薄だが、固定的な役割分担から解き放たれたアンサンブルはスタジオ盤以上にスリリングだ。特に、アクロバティックな2本使いから繰り出される、往年の「プログレ」ギタリストを想わす逸脱フレーズは聞き物。あと本誌的には、かつてONLY A MOTHERと同じレーベルからデビューしたことも忘れちゃならん。DIY感あふれるCD-R+手作りスリーヴでのリリース。
前号に引き続きプロヴィデンスのシーンを探る。紹介済の4thは、Cuneiformというレーベル・カラーを意識し過ぎたのかも。本作3rdではノイズやエレクトロニクス、ミニマル色はごく薄め。アコースティックな歌もので自然体な聴きやすさこそが印象に残る。東欧系を意識した哀愁味は前作同様だが、むしろ漂うのはONLY A MOTHERや、ジム・オルークのソロを想わせる「アメリカーナ」な薫り。2ndも同系の作風だ。また、当地のシーンを牽引するバンドのリーダー格(Alecももちろん参加)が一同に集合したという、BARNACLEDの『6』はチェンバー・ジャズ系。いまひとつの出来だった。
フィリピン・ロック界の重鎮からの信頼も篤いベースの名手。現地プレイヤー系雑誌に特集されたりの、いわゆるテクニカル系である。ところがこのヒト、自身の作品ではYES趣味を隠そうとしない。演奏技術のひけらかしに溺れず、コンパクトにまとめた楽曲が良い。コーラスのなりきり具合も好感が持てる。ドラムスが主に機械なのは残念だが、あえてすべての楽器を演奏したソロ9作目(含テープ作)。「No Lead Guitars」と謳うクレジットがまた泣かせる。