JENNY SCHEINMAN - 12 Songs

幻想のアメリカーナ探訪 新譜・Cryptogramophone CG125 (2005)

 米西海岸出身で、近年はNYを活動拠点にするヴァイオリン奏者。これまでにソロ作は3枚。玄人好みのするプレイで仲間からの信頼は篤い反面、リスナーにとっては、ぱっと聴きの派手な個性に欠ける。悪く言えば共演者次第だった彼女の音楽性が、ここに来てようやく焦点を結んだ感がある。B・フリゼル(本作にも客演)のバンドに参加したことは重要な転機だったに違いない。そういえば彼女は、CHARMING HOSTESS(BIG BAND)の1st録音時メンバーだった。当時シンガーとして参加したばかりのカーラが、悪いお兄さまたち(笑)の薫陶を受けて、現在に至るのとなんと対照的なことか。

(初出:2006, EURO ROCK PRESS Vol.28)


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SKELTON CREW - Learn To Talk / The Country of Blind

リマスター再発2枚組 再発・Fred Records / ReR Megacorp ReR/FRO 8/9 (2005)

チェロ(故トム・コラ)とギター(F・フリス)で一体どんな音楽が…。集まった聴衆の期待。そんな2人きりで演奏したライヴをほぼ再現したかの、どよめきと喝采とが聞こえてきそうな1枚目。RIOの理想主義も、ポスト・パンクの脱構築も、いまではすっかり風化してしまったけれど、彼らのDIY精神はいまも絶えることなく綿々と受け継がれている。こんなにスカスカなのに、にじみ出るエレガンス。ゴリゴリにロックで、とびきりポップな、奇跡の音楽がここに。対して2枚目は、ジーナ・パーキンスを加えて緻密さを増すも、どこか無理の残るカラ元気のような、やり尽し/煮詰まり感を打破し切れぬ印象も残した。

(初出:2006, EURO ROCK PRESS Vol.28)


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ITIBERE ORCHESTRA FAMILIA - Calendario Do Som

1月24日はイチベレの誕生日 新譜・Maritaca IOF 0205 (2005)

4年ぶり2作目は、師匠エルメートの楽譜集『音のカレンダー』の音盤化である。毎日1曲をテーマに、日記のように綴られた全366曲(閏年!)のうち27曲をセレクト。メンバーをはじめ録音に関わった人々の「誕生日」という、シンプルな発想が楽しい。ブックレットには全曲分の直筆楽譜を収録。1曲/1枚のコード譜から、こんなに芳醇な響きが導き出せることに感動する。完全にエルメート・マナーを自家薬籠中のものとした、イチベレならではの編曲の妙だろうけど、若き生徒たちの演奏も軽やかで瑞々しく、音楽する歓喜に満ちている。そのうえ美男美女ぞろいのスター性も兼備ときては。

(初出:2006, EURO ROCK PRESS Vol.28)

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ANANE - The Evolution Ethnic

PRS Records第5弾! 新譜・PRS (2005)

ジョグジャカルタ出身の9人組。大半の曲はアチェ州(独立運動や津波被災地として知られる)の民謡をアレンジしたもので、そこにどんな意図が含まれるかは不明。サムラとかファーマーズ・マーケットを引き合いに出す声もあるようだが、泥臭くも妖しい演奏は北欧というより、むしろイタロ流(笑)。ラツィオやオザンナを想起させる闇雲な突進力と、奔流の如き異種音楽の衝突と。笑いながら思わず拳を握りしめてしまう痛快な一枚。ちなみに第4弾NERV『Ragam』は女性ヴァイオリン奏者をフィーチュアした、インスト6人組。根はハードロックでやや通俗な場面も多いが、併せておすすめ。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.27)

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MISS GOULASH - Karaoke Karate Club

仏のミスター・バングル? 新譜・Ektic (2004)

南仏リヨンを拠点に活動するパンク/アヴァン系バンドからの選抜9人組。ルネ・リュシエ関連のプロジェクトのために現地調達された(?)メンバーをもとに、パーマネントなバンドとして固まったのが'98年だとか。管×3/弦×2/リズム隊/専任ヴォーカルを配し、クレズマー風味を効かせたジャズ+パンクが基本芸風だ。タイトルやカヴァーに表れた「日本」は音楽面では影もなし。その名のとおりMR. BUNGLEを意識しているのは明らかだが、本家ほどの「無駄テク」あふれる至芸には至らず。もっとハジけることが出来そうで惜しい。雰囲気はベルギー産のバンドにも近い。アルバム2作目。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.27)


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PATTERN IS MOVEMENT - Stowaway

待望の1stフルレンス、だが 新譜・Noreaster Failed Industries (2005)

少々買いかぶり過ぎだったかも知れない。前作ミニは美味しいところをメドレー仕立てにした予告編的な作品だと思っていた。ところが本作でも印象がほとんど変わらないのはどうしたわけか。いくら良い湯加減でも浸りっぱなしでは飽きてしまう。Aメロ→Bメロの繰り返し→次の曲、では楽曲としてどうか。ミニマルであろうとする意図は分かるが「うた」を中心に据えている分、そこに「物語」を求めてしまう筆者の問題か。あるいは単純に、前号でも指摘した構成力の問題か。叙情派Math Rock+ローズ&メロトロン+ジェントリーな歌声と、ツボ押し要素満載のバンドだからこそあえて辛口を。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.27)


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MICHAEL COLUMBIA - These are Colored Bars

ハンドメイドなデンキ系 新譜・Alabaster (2004)

BABLICON、OLIVIA TREMOR CONTROL、ICY DEMONS、NEED NEW BODYなど、かつて本欄で紹介されてきた「コチラ向け」バンドを渡り歩くヴェテラン2人のユニット。そのライヴ・ステージをそのまま録音/再現したようなデビュー作である。アナログ感覚のゆるーい反復ビート/ループ感覚を軸に、ざっくりと生ドラムスが刻み、サックス&クラリネットが舞い、歌が少々という芸風。ヴァイオリンが1曲ゲスト参加するほか、すべて2人による演奏で、ロー・テクノロジーだが優れたミュージシャン・シップを感じさせる。プロデュース/エンジニアには、おなじみGriffin Rodriguezの名も。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.27)


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TV TOY - Shards 1977-1983

疾走するプログ・パンク 初CD化・Reversing Recordings (2004)

かつてのファン企画によるメモリアル盤。粒ぞろいの全23曲は、遺された数枚のEPをはじめ、未発表セッション、ライヴ音源、デモ・テープなどをコンパイルしたもの。丁寧な編集が印象に残る。ノン・ミュージシャンによる「衝撃」や、ロフト・ジャズの興隆の陰で、かくも優れたバンドが埋もれてしまったのは時代のアヤと言うほかない。なんせ、かのdB'sですらアルバム・デビューは英国から。ちょいヒネった歌もの主体の、熱くプログレッシヴな音は、当時のNYのシーンでは「お呼びでなかった」らしい。サックス入りの曲など、20年以上早いSWEEP THE LEG JOHNNYみたいだ。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.27)


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PTôSE - Ignobles Limaces / Night Of The Reptiles

80'sアヴァンNWポップ 初CD化・Holy Night in the Outhouse(1983, 1984)

こりゃ懐かしい。AYAAからのデビューLPと、それ以前のカセット作品をカップリングした再発盤。AYAAといえばかつての「レコメン・フランス支部」。プロパーなイメージからちょっと外した、地元アーティストのちょっと風変わりな作品を多数リリースしたことでも知られる。現在も活動するKRIMPEREIやLOOK DE BOUKなどの世界デビューに貢献。当時筆者はこれら一連の作品を楽しみにしていたクチだ。同時期のGeoff Leighや、ETRON FOUという声もあるけれど、やはりこのテの音の元祖はRESIDENTSかと。Mark Beyerのアートワークも貴重だ。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)

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MANDARIN MOVIE - s/t

シカゴ系不穏組渾沌派 新譜・Aesthetics(2005)

ISOTOPE 217°やCHICAGO UNDERGROUND TRIOなどで知られるRob Mazurek率いる新プロジェクト。サイドを固めるシカゴ人脈は、エレ/アコ・ベース×2+トロンボーン+ドラムスと、低音方向にエネルギーを集中した編成。NYからやって来たAlan Lichtのギターは、ソロ・プレイヤーとして「上手い」とされるそれとは全く違う演奏スタイルで「ギョリギョリ」と存在感を放つ。ISOTOPE 217°がとてもお行儀よく感じてしまうような、規格外ジャズがここに。また、Mazurek自身のコルネットは比較的控えめ、サウンド・トリートメントにより注力しているようにも感じた。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


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THE MOMMYHEADS - You're not a Dream

10年ぶりの再結成 新譜・Bladen Country(2008)

バンザーイ! 彼らの新作がまた聞けるとは!
なんつーかもう・・・感無量という他ないよ。

アルバムとしては6枚目になりますか。なんでも初代のドラムスが昨年亡くなったことがきっかけだそうで、解散時の4人が再び揃ってます。いえね、YouTubeをあちこち回っているうち、辿り着いたライヴ映像の日付が『09/08』とあったんですよ。んでもって『えぇぇぇ!? それってどゆこと?』となりまして……実は昨年の9月にリリースされていたのですが、まさかのハナシで気付くのが遅れた次第。

なんといってもギター&ヴォーカルの Adam Elk と、キーボードの Michael Holt が再び手を組んでくれたことでしょう。それぞれ解散後、何枚かソロ・アルバムをリリースしていますが、そのどちらも「善き相方」の不在が際立つような仕上がりでしたから。

正直言うなら、ストレートなロケンロールと70年代ソウルの影響濃い Adam Elk より、ちょい捻ったメロディラインと、ジャジーな音遣いが持ち味の Michael Holt のほうが好みなんですけどね……でもやはり Adam の「声」と、独特なフレージングのギターがあってこそ、なんですわ。

新録が半分で、あとは未発表と未CD化の何曲か。10年以上の隔たりがありますが、それを感じさせぬほど、違和感なく1枚のアルバムに仕上がってます。いままでのように「珠玉の1曲!」みたいなナンバーはないけれど、なんだかバランスが良いんですよ。それぞれが大人になったってことなのかな。激しく主張しなくても、このバンドらしさがにじみ出てます。さらにソロで追求してきた要素もしっかり加えつつ。

ひょっとすると最高傑作かもしれない。

わたしが「ベスト」を選曲するなら、確実にリストに入るであろう『Remedy』の初CD化も嬉しいな。零細レーベルから出たシングルB面曲で入手困難でしたもんね。現在住んでいる場所は東海岸と西海岸、カナダのトロントとだいぶ離れているので、コンスタントな活動は期待できないかもしれませんが、まずはめでたい!

(初出:2009, mixi)

http://www.myspace.com/theoneandonlymommyheads

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TIME OF ORCHIDS - Sarcast While

まるで別のバンドみたいに 新譜・Tzadik(2005)

いや、そもそも1曲中にいくつもバンドが同居しているような、変態的ザッピング感覚がウリだったわけで。かつての正反対を行くようなトータル性に驚かされた。ナイーヴなヴォーカル、ゲスト女性2人を含むコーラスの「歌モノ」メインの作風。焼き付いたクリムゾンみたいな、叙情味と無気味な不協和音とを往還するギターに加え、インダストリアル味もある重苦しいリズムや、その出自を示すようなエクストリームなシャウトも少々。前号特集『オルタナティヴ・シンフォニック』に興味を持たれた向きは是非一聴を。4曲入り/42分のEPをはさんで3作目。エモーショナルな一枚。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


ラストアルバムになってしまった次作からのPV。

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CARLA KIHLSTEDT AND SHAHZAD ISMAILY - Flying Low

耳を捉えて放さぬ響き 新譜・Holy Night in the Outhouse (2004)

2001年初演という現代ダンス公演のために制作。2人でほぼ全ての楽器を操り、最小限の音数で紡いだ作品。音楽単体でも全く不満を感じさせない内容で、Carlaが関わったどの作品とも趣を異にする。その息遣いを感じ取れるほどヴァイオリン&ヴォーカルを堪能できる、ファンにあっては必聴作(笑)。仮想的トラッドと、アコースティック・チェンバーと、重層的ノイズの入り交じる音像に、ART BEARSリスペクト印をさりげなく。この無邪気さがどうにも憎めない。Ismailyはパキスタン系マルチ奏者で、のちにCarlaのソロ・ユニット「TWO FOOT YARD」にメンバーとして参加したヒト。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


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PATTERN IS MOVEMENT - The (Im)possibility of Longing

Math Rock+うたごころ 新譜・Noreaster Failed Industries (2004)

フィラデルフィア発5人組のデビュー盤。26分ほどのミニ・アルバムで、組曲と呼ぶにはあまりにミニマルな断章を10編収録。SEA AND CAKEやJohn Vandersliceを意識しているという発言のとおり、基本は繊細な歌ものである。奇数拍子を多用した楽曲に、ギター2本が織りなすMath Rock的テクスチャー感もあるが、ローズ・ピアノやメロトロンのゆらめく色彩に彩られた淡い叙情美と、浮遊感と。さらに随所にダイナミックなアクセントを加えて、もう少し構成力を磨けば無敵だろう。近日リリース予定のフルレンスに期待である。カンタベリー好きにもアピールしそうな一枚。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


2人組になってからの映像ですね。

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PIT ER PAT - Shakey

幸福なケミストリー 新譜・Thrill Jockey (2005)

バンド活動はこれが初めてという女性キイボードと、ギター兼ソングライターに逃げられ、新たなメンバーを探していたドラムス&ベースの男性2人。予定されていたライヴのための、なかば苦し紛れの選択が幸運に転じた。クラシックしか演奏経験がなかったにも関わらず、最初のリハーサルから確かな手ごたえを感じたというからバンドは面白い。エレピの素朴なリフレインに、やたら手数の多いドラムスが絡む。奇数拍子の多用+儚なげなヘタウマ・ヴォーカルといえばまるでCAVEMANだが、よりストレートかつ開放的な感じか。シカゴ出身。6曲入りミニに続くデビュー・フルレンス。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)

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CAVEMAN SHOESTORE - Supersale

「CAVEMAN」封印解除 新譜・Buildabuzz (2005)

およそ10年ぶりの再結成。そのタイトルのとおり、この数年で溜め込んだアイディアを総決算したような作品だ。さすがに以前のいびつなオルタナ風味こそ薄れたが、「カンタベリー」リスペクトな作風は相変わらず。より大きなグルーヴを意識する近年の傾向に加え、3人が対等に渡り合う「ロック」な感触が戻ってきた。特に復帰した盟友Franzoniのハリキリぶりが印象的である。ただし曲数は少し絞ったほうが良かったかも。DiFalcoのヴォーカルを立て、ある意味ポップな印象を残した「HUGHSCORE」も別プロジェクトとして存続するようだ。その新作も準備中とのこと。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


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SUJIWO TEJO - Syair Dunia Maya

極彩色の仮想オペラ 新譜・Eksotika Karmawibhangga Indonesia (2005)

5年ぶり3作目。幼少時から修練を積んだ伝統芸能の世界をベースに、土木工学と数学を修めたという「理系」な構築性/実験性に加え、かの地最大の日刊紙コンパスの元記者というジャーナリスティックな視点も併せ持つ、あらゆる表現活動を横断する希有なアーティスト。音楽面では作・編曲はもちろん、ヴァイオリンやサックスなど一流演奏家と渡り合う腕前も披露。本作では「古ジャワ語」で綴る自作詞のもと、自らの変幻自在な声を駆使して渦巻く磁場のような音世界を展開。ムード歌謡ばりの俗なメロディと、破綻寸前の高度な和声が交錯するチェンバー歌謡劇。強烈な一枚。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.26)


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DRUMS & TUBA - Live

'95年結成、不動のメンバー 新譜CD-R・KUFALA Recordings (2005)

年間200本という地道なツアー活動によって、いわゆるJamband筋で評価を上げてきたインスト・トリオ。ジャズ・ファンクからユーモラス、デンキ系トリップ・ジャムまで揺れ幅大きい演奏。ベース不在のぶん直線的なドライヴ感こそ希薄だが、固定的な役割分担から解き放たれたアンサンブルはスタジオ盤以上にスリリングだ。特に、アクロバティックな2本使いから繰り出される、往年の「プログレ」ギタリストを想わす逸脱フレーズは聞き物。あと本誌的には、かつてONLY A MOTHERと同じレーベルからデビューしたことも忘れちゃならん。DIY感あふれるCD-R+手作りスリーヴでのリリース。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.25)


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ALEC K. REDFEARN & THE EYESORES - Every Man for Himself & God Against All

メロディの良さが際立つ 新譜・Corleone (2003)

前号に引き続きプロヴィデンスのシーンを探る。紹介済の4thは、Cuneiformというレーベル・カラーを意識し過ぎたのかも。本作3rdではノイズやエレクトロニクス、ミニマル色はごく薄め。アコースティックな歌もので自然体な聴きやすさこそが印象に残る。東欧系を意識した哀愁味は前作同様だが、むしろ漂うのはONLY A MOTHERや、ジム・オルークのソロを想わせる「アメリカーナ」な薫り。2ndも同系の作風だ。また、当地のシーンを牽引するバンドのリーダー格(Alecももちろん参加)が一同に集合したという、BARNACLEDの『6』はチェンバー・ジャズ系。いまひとつの出来だった。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.25)

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CHEER-ACCIDENT - Gumballhead the Cat

鼻歌的アヴァン 新譜・Skin Graft (2003)

ミニコミ「Chicago Reader」に連載中という、コミックのサウンド・トラックとして制作された作品。絵柄どおりのパンク&ヴァイオレンスな作風はあまり好みではないが、繊細かつダルな演奏との相性は狙い通り良い。公式サイトによれば、本誌Vol.20の拙レビューで紹介済み『Introducing Lemon』の前作にあたるようだ。長尺曲を支える構築力にいまいち欠け、無謀とも思える大作指向の次作より、気負いのなさが却って好ましい小品集に仕上がっている。こちらのほうが彼らの資質には合っているのではないか。7インチ・スリーヴ大16ページの描き下ろし小冊子+CD。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.25)


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THE BOOK OF KNOTS - s/t

ブルックリンが面白くなってきた 新譜・Arclight Records (2004)

メンバー自ら経営する録音スタジオを拠点にしたレコーディング・プロジェクト。元PERE UBU他のTony Maimoneをはじめ、コア・メンバー3人の経歴からは予想もつかないプログレッシヴ性に驚く。深く沈潜するリズムと、軋むようなギターが印象的なヘヴィ・サウンドの反面。恐ろしく繊細に配置されたコンセプチャルな作風は、SGMとの共通点も多い。実際ドラムスのMatthias Bottiは両バンドを掛け持ちするうえに、相変わらず精力的な活動ぶりのCarla Kihlstedtが3曲に参加。彼女の色がかなり強い仕上がりも当然のごとく、そのまま正式加入に至った模様。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.25)


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CHARMING HOSTESS - Punch

SGM結成前夜 新譜・ReR Megacorp (2004)

1998年発表のデビュー作『Eat』に続くアルバムとして録音されながら、諸般の事情によりお蔵入りになっていた作品。前号で触れた「Big Band」とは、アカペラ女性3人の本隊に、RIOからの影響色濃いIDIOT FLESHというバンドの3人が合体した過去形の編成だ。女性たちの向こう見ずなパワーに牽引され、ふっ切れたような力技で応酬する男性陣。その痛快爆裂サウンドは前作同様のもの。当時のライヴで定番だったART BEARSのカヴァーは、Carla Kihlstedtを引き抜くかたちで結成されたSLEEPYTIME GORILLA MUSEUMに昇華していくわけだが、残念ながら本作には未収録。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.25)

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REDRESSERS - To Each According...

寝るヒマあるのかと 新譜・free porcupine society (2004)

今もっともイキの良いヴァイオリン・プレイヤーといえば、Carla Kihlstedt(SGM、TIN HAT TRIO他)を置いて他には居ないだろう。呆れるほどハード・ワーキンな彼女の参加作がまた一枚。Devin Hoff(NELS CLINE SINGERS他)をリーダー兼作曲者に、Ches Smith(SECRET CHIEF 3他)、Marika Hughs(現CHARMING HOSTESS他)を加えた、意外な取り合わせのカルテットだ。アコースティック&無国籍風味のパンキッシュ・ジャズという感じ。コントラバス&チェロの不穏なうねりを、ヴァイオリン&ドラムスが切り裂くという構図が明確な聴きやすさ。濃密なサウンドは迫力充分。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.24)

http://www.myspace.com/redressers

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ALEC K. REDFEARN AND THE EYESORES - The Quiet Room

ビザールな東欧風味 新譜・Cuneiform (2004)

ラヴクラフト生誕の地であり、かの有名バンドの曲名にもなった街プロヴィデンスで活躍するアコーディオン奏者/作曲家。かつて率いたAMOEBIC ENSEMBLEでは、その躁病的チェンバー・サウンドが「レコメン」筋の評判になったことも。彼を取り巻くシーンは意外に大きいようで関連作は多数。今後注目していきたい地域である。前述のバンドと平行して'97年に結成した「EYESORES」も既に4作目という。クレズマーやバルカン風味のもたらす聴きやすさの反面、とらえどころのない全体像。ミニマルな反復を軸に、哀愁メロディ(含む歌もの)と、ノイジーかつトランシーなインストが交錯する。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.24)


貴重なAMOEBIC ENSEMBLEの映像。

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CHARMING HOSTESS - Sarajevo Blues

ラス3曲にトドメ 新譜・TZADIK (2004)

待望の新作。実質的1stアルバムである。というのも「Eat!」は、現SGMのメンバーなどを加えた、いわゆる「BIG BAND」編成での作品だったから。本作も演奏陣は共通するものの、あくまで3人の「声」が主役である。ブルガリアの女声コーラスの模倣からはじまって、いまではほとんどの楽曲がオリジナル。Jewlia Eisenbergのソロ作として、同じくTZADIKからリリースされた『Trilectic』('01) に連なる作風だ。ただしラスト3曲は全く別コンセプト。アコースティック・チェンバーな楽曲(RIO色濃いぞー)の素晴らしさに、予告されて久しいBIG BAND作(ReRからリリース予定)の期待も高まる。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.24)


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THE PLOT TO BLOW UP THE EIFFEL TOWER - Dissertation, Honey

変わり種カオティック 新譜・Happy Couples Never Last(2003)

ハードコア・ルーツの一派で、このところ急速に興隆してきたカオティックと呼ばれるジャンルがある。同じく変拍子系のMath Rockと比べて、直情的反射神経勝負の面が濃厚で、整合性をあまり気にしないのが『渾沌』たる所以だろう。キング・クリムゾンに対するネイキッド・シティという感じか。ただ、聴き手よりも演奏するほうが先に飽きてしまうのがこのテの弱点であり、CAVE INのようにピンク・フロイド的な「ロックの王道」に軸足を移す連中も出てきている。本作では、サブ・メンバーが持ち込むアヴァン・ジャズな要素や物語性はともかくも、どこか醒めたユーモアを感じさせる点で異色の存在といえそう。

(初出:2003, EURO ROCK PRESS Vol.17)


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DNDI DONDI LEDESMA - Nova

アジアン・シンフォはYES風味 再発CD-R ・PeaceWork Music(2002)

フィリピン・ロック界の重鎮からの信頼も篤いベースの名手。現地プレイヤー系雑誌に特集されたりの、いわゆるテクニカル系である。ところがこのヒト、自身の作品ではYES趣味を隠そうとしない。演奏技術のひけらかしに溺れず、コンパクトにまとめた楽曲が良い。コーラスのなりきり具合も好感が持てる。ドラムスが主に機械なのは残念だが、あえてすべての楽器を演奏したソロ9作目(含テープ作)。「No Lead Guitars」と謳うクレジットがまた泣かせる。

(初出:2004, EURO ROCK PRESS Vol.23)


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KANTATA TAKWA - s/t

オヤジたちのシアトリカル・シンフォ 初CD化・Airo(1990)

現代インドネシアの大衆音楽を語る上で、欠かすことのできない作品がCD化された。反骨のカリスマ、路上出身の社会派シンガーIwan Falsが、盟友Sawung Jaboとともに結成したロック・バンド「SUWAMI」と、反体制派詩人Rendra率いる「Bengkel Teater」がジョイント。数万の観客を集めた一大イヴェントの音盤化である。悪名高いスハルト独裁体制の只中で、社会の不条理や庶民に強いられる不合理を、覚めた視点で描く「うた」は熱狂的な支持を得たらしい。本誌では既におなじみJockieの華々しいキイボードを全面にフィーチュアした壮大なサウンド。'80年代的なリズムは多少軽めだが。

(未発表)


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FACE DITCH - s/t

クサレ縁コンビの近況 新譜・Build a Buzz (2004)

CAVEMAN」でおなじみFred Chalenor (b)とHenry Franzoni (dr)の原点。'79年にオレゴン州ポートランドで結成し、'85年まで活動したバンドを最初期のメンツ(+kbd)で再編したもの。聴衆を求め東へ西へ活動拠点を移すうち、関わったメンバーは多数。Myles BoisenやChris Cochraneなど重要人物も名を列ねる。米アヴァン界の裏歴史はウェブ で一読されたし。時流に即したグルーヴ・ジャム系を意識しつつ、演奏自体の個性は良くも悪くも不変。先駆者たる自負は認めたいが、どうにも閉息感の残る作品だ。Franzoniの復帰に伴い「SHOESTORE」も再始動だとか。

(初出:2004, EURO ROCK PRESS Vol.23)


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ICY DEMONS - Fight Back!

師はワイアット、母は西独出身で 新譜・Cloudrecordings (2004)

Griffin Rodriguez(BABLICON, HIM)とChris Powell(NEED NEW BODY, SOLA)を軸に、脇をシカゴ系人脈で固めた新プロジェクト。BABLICONの発展形とも言える作風で、底を流れる初期SOFT MACHINEFAUSTあたりのエッセンスは変わらぬものの、奇妙な音響コラージュやサイケ味を排し、純音楽的によりソフィスティケイトされた内容となっている。美しく曲がりくねったメロディに豊かなリズム。暖かく柔らかな弦/木管の響き。強いて例えるならPost Rock世代のZNRといった趣である。のどかな片田舎の風景から異世界に迷い込むような、味わい深い一枚。

(初出:2004, EURO ROCK PRESS Vol.23)


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