CONGRESO - La Loca Sin Zapatos

4年ぶりの新作 新譜・Macondo - Sony Music(2001)

ヴィクトル・ハラの死とその背景を追ったドキュメンタリー『禁じられた歌』の著者、八木啓代さん曰く『チリ人というのは、ラテンの中の日本人はたまたドイツ人と言いたいほど、真面目で几帳面な人が多い』のだそうだ。なるほど彼らの精緻なアンサンブルにも、そんな気質が反映されているように思われる。それは、ブラジルのパスコアルの天衣無縫ぶりとはまた違った「理系」な周到さである。全体の印象としては淡い叙情に彩られた大人の音楽ながら、いまだ枯れ切らぬ刺が随所に、巧妙に織り込まれている。

(初出:2003, EURO ROCK PRESS Vol.19)


アルバムタイトルにもなった『La Loca Sin Zapatos』。

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PATA MASTERS meets KUA ETNIKA - Pata Java

ハジけるチェンバー・ガムラン 新譜・Pata Music (2004)

独ケルン近郊を拠点にする硬派ジャズ集団PATA MASTERSと、ジョグジャカルタの鬼才Djaduk Ferianto率いるKUA ETNIKAとの共演盤。ジャズとガムランの共演はさほど珍しいものではないが、ここまで刺激的な音に結実した例があっただろうか。仏ARFIとの共演など難解な印象の強いPATA側に対して、別ユニットORKES SINTEN REMENのお笑い寸前の雑食性からすると、お行儀良すぎてイマイチ食い足りなかったKUA ETNIKA。堅物にユーモアを、抽象性に芸能性を、端正にパンクを。互いの意外な側面を引き出し、補完し合った感のある理想的な結果に。どの曲も疾走感に満ちて痛快な一枚。

(初出:2005, EURO ROCK PRESS Vol.24)


KUA ETNICA『Denau』。こんなに良くなってるとは。
食い足りないなんて言ってゴメン。
他にも4曲上がってますよ。


PATA MASTERSも絵がともなうと圧巻ですね。
左の管は一体。コレ鳴らすの大変そう。

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KRAKATAU 2000 - Magical Match

眩いばかりの色彩感あふれる 新譜・HP/Musica (2000)

長きに渡る試行錯誤は無駄ではなかったようだ。'94年の前作『Mystical Mist』での大胆な路線変更から6年。ポップ・フュージョンから民族路線への流れはさほど珍しいものではないが、これは表層的に「取り入れた」というレベルではない。民族楽器のフレーズをもとに、ジャズ・ロック的な切り返しの多い楽曲をいちから組み直した感。サンプリングに慣れた耳にはごく自然すぎて聴き過ごしてしまいそうだが、なまじの手間ではないはず。前作ではあまり出番のなかったTrie嬢のヴォーカルも全面にフィーチュア。とてつもなく俗っぽく、ミステリアスでもある不思議のインドネシアそのものか。

(初出:2001, EURO ROCK PRESS Vol.11)

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INTI-ILLIMANI - Palimpsesto

いわゆる「終わりなきツアー」中の作品

'81年ローマでの録音。欧州ツアー中に起きた母国の政変により帰国を禁じられ、亡命生活を余儀なくされていた時代の作品である。ケーナやサンポーニャなどの出番が少なくなり「フォルクローレ」らしさは薄くなったものの、持ち前のプログレッシヴな感覚は健在だ。『Canción para matar una culebra』('79)あたりに顕著な、先鋭的な音遣いを組み込んでいくという方法より、いろいろなスタイルをミックスすることに重点が置かれている。そのため表面的にはこぎれいに過ぎ、物足りなさを感じるかもしれない。


動画はこのアルバムの冒頭曲『El Mercado Testaccio』。

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CONGRESO - Pajaros de Arcilla

最高作と名高い6th 初CD化・Musica & Cultura (2001)

発表当時アルゼンチン盤のみのリリースだったため、CD化が遅れていた作品。地元未発売の理由は、商業的でないということで、CBSチリが発売を拒否したためということになっている。しかし、なんといっても軍事政権の時代を生き抜いたバンドだ。3年の充電期間を経て発表された4thの極端な路線変更〜まるで別のバンドに変貌した理由とは何か。本作に至ってブラジル人マルチ・プレイヤー兼ヴォーカリストの脱退を機に、インスト志向はさらに進む。変幻自在に疾走する、まさに遠慮無用のサウンドは、ジャズロック/チェンバー路線の極め付け。そして『粘土の鳩』というタイトルの意味深長さよ。

(初出:2002 EURO ROCK PRESS Vol.14)

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JEWLIA EISENBERG - Trilectic

チャミホス2ndはどうなった!? 新譜・TZADIK (2001)

名義上はリーダーの初ソロ・アルバムだが、実質的に「オリジナル」CHARMING HOSTESSの初アルバムとして扱われている。メンバー全員参加のほか、Frank GrauやDawn McCarthyまで身内総動員状態である。クレジットからは学究肌な側面も伺え、声という根源的な肉体表現をあらゆる角度から追求。無伴奏のアカペラがほとんどだが、よくある「ヴォイス多重もの」とは趣を異にする。「ビッグ・バンド」編成での痛快爆裂サウンドには至らぬまでも、エキセントリックかつユーモラスな響きだけでも十分楽しめそうな一枚。

TZADIKの『Radical Jewish Culture』からのリリースとは意外だったが、なるほどJewliaという名はユダヤ系であることの表明であったか。

(ほとんど改稿してますが、初出:2002 EURO ROCK PRESS Vol.12)

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FAUN FABLES - Mother Twilight

都市生活者の孤独に響く冷気 新譜・Earthlight (2001)

興味深いリリースが続くサンフランシスコからまた一枚。Dawn McCarthyの弾き語りを基本に、SLEEPYTIME GORILLA MUSEUMのNils Frykdahlが多種の楽器でサポートする男女デュオである。素人ぽく不安定な歌声ではあるが、かえって寂寥感が身に沁みてくる不思議。呪術的なリフレインの上に乗る硬質な声音には、危うくも拒み難い響きが感じられた。Nilsの仕事も的確で、Prog者のツボ(笑)をそこここで突いてくれる。

(初出:2002 EURO ROCK PRESS Vol.12)


アルバムには未収録のようです。

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CHRISYE - Sabda Alam

Yockieと共作ふたたび CD化・Musica(1978)

長年インドネシア音楽界の頂点に君臨し続けるChrisyeは、1949年首都ジャカルタの生まれ。EL&Pスタイルの鍵盤ロックとガムランとを大胆に融合した、本格的プログ・ロックのプロジェクトGURUH GIPSYの唯一のアルバム('75)にベース&ヴォーカルで参加。その後ソロ歌手として独立し、Yockieとの連名による『Jurang Pemisah』('76)、映画のサウンド・トラック『Badai Pasti Berlalu』('77)に続く、初の単独名義での作品。前2作とよく似た印象のクラシカルなポップスであるが、大衆路線を強めたGuruh Soekarno Putraの提供曲などを交え、よりカラフルで幅広い曲想を聴かせる充実作(GURUH GIPSY再録含む)。

(初出:2004, EURO ROCK PRESS Vol.20)

CHRISYEはインドネシア・ポピュラー音楽界の大御所。70年代なかばにデビュー。現在にもつながる「ポップスの新潮流」の先がけとなったヒトです。以来現在に至るまでコンスタントにヒットを飛ばし続けていて、そういう意味では、日本でいうと井 上陽 水とか小 田和 正クラス、あるいはそれ以上の存在と言えるかも。

Nasution兄弟と「Gank Pegangsaan」周辺の詳しいハナシは、これまた尻さんサイトのココを参照していただくとして……。

この「Sabda Alam」はときに「街角クラブ」を彷佛とさせるサウンドでびっくりします。Clube da Esquina……ブラジルはミナス州のミルトン・ナシメントを中心にしたアレですね。「通り」つながりという奇妙な符合も興味深いですが、ビートルズ以来の正統的ロック/ポップの流れを共有しているから、あるいは時期的なところも似ているからなのかな。ミルトンというよりは、ロー・ボルジェスみたいな浮遊感のある優しいサウンドで、曲によっては驚くほどプログレしてます。

(再掲:2004年12月、当サイト)

2007年3月30日、末期の肺がんで闘病を続けていたCHRISYEが亡くなりました。安らかに。


6曲目。Guruh作『Kala Sang Surya Tenggelam』です。
ただし本アルバムに収録のものでなく新アレンジ版。
アレな雰囲気は残っているけど。

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ADA - Heaven of Love

移籍後のほうが売れてます 新譜・EMI Indonesia(2004)

なんといっても冒頭の曲でしょう。かつてパクリすれすれの方法で提示した「ジェネシス大好き」をもっと巧妙に、インドネシアで主流なポップスのカタチに換骨奪胎してます。しかも女性ヴォーカル(Gita GutawaはErwin Gutawaの血縁=妹?)とのデュエットですよ。小編成のオケを伴いつつ女声スキャットが舞うようなあたり、プログレ系オタク趣味のツボにもろハマリでしょう。深夜アニメのエンディングとかに使ってみたくなりますねぇ。

以降の曲にも「シンフォ・プログレ」的仕掛けが散見されますが、特筆すべきものはそれほどありません。むしろベタ甘いメロディへの偏向は、時代を逆行するようなマイナス面も……。さすがに1枚通して聴くのは腹にもたれて苦しいです。いくらなんでも今回はやり過ぎでしたかね。

(再掲:2005年1月、当サイト)


くだんの冒頭曲『Yang Terbaik Bagimu』。

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LOMBA CIPTA LAGU REMAJA - Dasa Tembang Tercantik 1977, 1978

シンフォ・ポップの伝統 CD化・Bravo Music(2003)

L.C.L.R.とは『青年作曲コンクール』の意。ジャカルタの民放FM局が主催し、入賞曲はプロの演奏家により録音・発売される、という企画だったらしい。CHRISYEの実質的デビュー曲『Lilin-Lilin Kecil』は第1回('77年)の優勝で、新世代のポップスとして現在につながる音楽シーンを先導した曲といわれる。いわゆる「ポップ・クレアティフ」の原点だ。今回のCD化(音質は極悪)は初年度と2年目の入賞曲集。演奏陣にNasution兄弟やYockieなどコチラ系人脈が集結し、大衆的ながらプログレ色の濃いアレンジ。今日、DEWAのようなシンフォ・ポップが大人気となる下地がここにある。

(初出:2003 EURO ROCK PRESS Vol.19)


『Lilin-Lilin Kecil』をユニ・シャラ版でどうぞ。
このアレンジはやぱしYockieだよなぁ。
Yockie本人も出演『Pelangi』もチェックしてみてくだされ。

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